2018.07.15 歯周病と全身疾患
- 糖尿病の慢性合併症に「網膜症」「腎症」「神経障害」の『3大合併症』があることはよく知られています。
そして各分野での啓発活動によって、歯周病が「糖尿病の第6の合併症である」ということも浸透しつつあるようです。歯周病を引き起こす細菌群がさまざまな全身疾患の症状を悪化させてしまうことを6/15号でご紹介しました。
今号ではさらに掘り下げてみようと思います。
細菌が血液の中に紛れ込み、全身の血管を巡ることを「菌血症」といい、歯科に関連して認められる状態を『歯原性菌血症』と呼びます。
歯と歯ぐきのすき間に歯周病菌などの細菌群がプラーク(歯垢)を形成し、歯を支持している組織に炎症を起こします。
歯周組織の炎症が進み歯周ポケットができると、毒性の強い歯周病菌は奥へ奥へと侵攻し炎症部分から血管へ入ると、血液と一緒に体内を巡っていろいろな臓器や血管に悪影響を及ぼしていきます。
厚生労働省が発表している日本人の死因年齢別表(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html)で、65歳以上になるといきなり上位にランクインしてくるのが「肺炎」です。私たちにはもともと、ものを飲み込もうとするチカラ(嚥下能力)や、誤って何かを気管に入れてしまったときにそれを取り出そうとするチカラ(咳反射)が自然とできるようになっています。
しかし高齢になり免疫力が低下してくると、これらの力が弱くなってきて無意識のうちに気管に異物が入ってしまう「不顕性誤嚥」を起こすようになります。
そしてこの中に歯周病菌のような毒性の強い菌が入り込んでいると、肺炎を引き起こしてしまうのです。
歯周病菌などによる感染症も心疾患の危険因子となっています。
感染性心内膜炎は、血流にのって侵入してきた細菌が心臓の弁にとどまり、心臓の内側を覆う膜に炎症を起こします。
体重が2500g未満で産まれた赤ちゃんを低出生体重児といい、在胎37週未満で産まれた赤ちゃんを早産児といいます。歯周病菌が増えると、免疫を担当する細胞から血中に「サイトカイン」という情報伝達物質が放出されます。
サイトカインの過剰分泌はさらに歯周病を加速させるという悪循環に加え、血中のサイトカイン濃度の高まりは子宮の収縮も促します。これが早産の原因と考えられて、正期産の人に比べ、切迫早産の妊婦の歯周病菌数は4.5倍もあったという報告もあります。
血中を巡る歯周病菌によって、血糖値の上昇を抑える働きをするインスリンの効果を阻害する物質を増加させ、糖尿病の発症・悪化を促します。
また糖尿病は口腔内の乾燥を引き起こします。唾液の分泌量が減少すると歯周病の原因菌が繁殖しやすくなり、歯周病の進行を加速させてしまいます。このように相互に悪影響を及ぼしている糖尿病と歯周病。
糖尿病治療をしている人は、歯周病のケアもしっかりしていくことが大切です。
2018年7月17日 4:19 PM ishigami