2018.10.01 匂い・香りの効果
- 私たちの周りにはさまざまなにおいがあふれています。
人間は文明を発達させ文化的な生活を営むことで、他の動物のように本能的な鋭い嗅覚を退化させてしまいましたが、現代のストレス社会では「匂い・香り」の刺激による癒しの効果が注目され、アロマテラピー(芳香療法)やアロマコロジー(芳香心理学)として、身近に私たちの心や生活環境に浸透してきています。
『火をおこす』術を身につけた人類が、燃える草木や樹脂から発する快い香りを生活に取り入れるようになったのが始まりといわれています。
日本でも仏教の伝来とともに精神的・宗教的に用いられるようになり、やがては趣味として香りを楽しむようになり、室町時代には「香道」として確立されます。
そして江戸時代なると、教養人の身だしなみとして利用されはじめ、石鹸や香水などが普及していきます。近年では石油化学の進歩により、フレグランス(化粧品用)やフレーバー(食品用)、アロマ(医療用)などさまざまな形で活用されるようになりました。
快い匂い・香りは脳の前頭葉に刺激を与え、意欲や感情を高めたり、免疫抗体を増加させる効果も認められ、リラックスや癒しを求めて積極的に香りを利用するようになってきました。
市場でも香水などの化粧品や、柔軟剤や芳香剤など、香りに関する商品は多様化しています。あなたはどんな「匂い・香り」が好きですか?
好みのにおいは人それぞれですが、樹木や果実、草花や大地、磯など「自然の香り」に触れると、私たちは誰しも緊張が解けてリラックスした気分になります。
すでにお馴染みのVR(Virtual Reality)ですが、よりリアルな表現を求めて五感情報通信の研究が活発になっています。香りを数値化して情報を伝送し、遠隔地で再合成して香りを再現させるのだそうです。
近い将来、VRの世界に嗅覚の刺激が加わって、より現実的な体験ができる日がくるかもしれません。
『プルースト効果』って聞いたことありますか?
ふとあるにおいを嗅いだことで、そのにおいにまつわる昔の思い出が鮮明によみがえってくる現象のことで、フランスの文豪 Marcel Proust(1871-1922) の著書「失われしときを求めて」の作品中の描写から『プルースト効果』といわれています。嗅覚は記憶や情動の中枢でもある大脳辺縁系と直結しているため、においに結びついた記憶は強く残り、嗅覚の刺激によって思い出される記憶は、文字や味、音などを手がかりに思い出された記憶とは比較にならないほど強烈で鮮明だといわれています。
匂い・香りの好みには個人差があります。あなたにとって快い香りでも、他人にとっては頭痛や吐き気を伴うようなニオイであることも…公共の場ではそれぞれが周りに配慮しながら、上手に『香り』健康生活を楽しんでいきたいですね。
2018年10月1日 2:35 PM ishigami