2016.02.15 誤嚥性肺炎
- 『誤嚥性肺炎』という言葉を聞いたことがありますか? 高齢者のいるご家庭や介護の現場で働く人たちの間ではよく知られている言葉ですが、あまりなじみのない人も多いのではないでしょうか。
高齢者の肺炎の半数以上といわれる誤嚥性肺炎ですが、じつはお口の中の環境が大きく関係しているのです。
「ぱくっ、もぐもぐ、ごっくん」私たちが一日に何度となくくり返す、食べものや飲みものを飲み込む動作のことを『嚥下(えんげ)』といい、この動作がうまくできなくなってしまい、飲み込んだものが誤って気管や気管支内に入ることを『誤嚥』といいます。
ふだん私たちが食事をするとき、「嚥下反射」によって食べものや飲みものは食道へ送られるようになっています。
たまに食事中むせたりしてしまうのは、誤って飲食物が気管に入ってしまいそうになるのを「咳反射」によって防いでいるためです。むせたりすると自分でもわかりますし、周囲の人も気づきます。これを顕性誤嚥(けんせいごえん)といいます。しかし脳血管障害の影響や加齢によってこれらの反射機能が低下してしまい、知らず知らずのうちに唾液と一緒に口の中の細菌が肺へと流れ込んでしまうことがあります。
睡眠中など自分でも気がつかないときに起こっていることが多く、家族や介護者など周囲も気づくことができません。これを不顕性誤嚥といいます。高齢者の肺炎の多くはこの不顕性誤嚥によって引き起こされていると考えられています。
歯周病菌は、いまや成人の8割が罹患者かその予備軍であるといわれるほどの口腔内疾患、歯周病の原因菌です。その他にも口の中にはたくさんの常在菌が存在しており、誤嚥性肺炎の原因となる細菌は口腔内に棲む嫌気性菌で、その多くが歯周病菌であることがわかっています。
肺炎は日本人の死亡原因の第4位、そして肺炎で死亡する人の94%は後期高齢者といわれる75歳以上です。
さらに90歳以上では心疾患に次いで死因の2位にあがります。高齢者の肺炎の多くが誤嚥性肺炎であるということからも、この病気がとてもこわいものだと思ってしまうかもしれません。しかし口腔ケアでお口の中を清潔に保ち、低下した反射機能を高める訓練を行うことで誤嚥性肺炎を予防できることがわかってきました。
●口腔内の保湿ケア
●口腔粘膜の清掃
●歯面・歯間のブラッシング
●舌の清掃
●義歯の洗浄・保管 など。ブラシやスポンジ、綿棒などの口腔ケアグッズを上手に使い分けて清掃します。お口の汚れを取り除き清潔に保つことで、誤嚥性肺炎を引き起こす細菌の繁殖を防ぐことができます。
(起き上がって座った姿勢で、自分で行うことが機能トレーニングにもなります。家族や周りの人に見守ってもらいながら、自分でできることはやってみましょう。)
●舌の体操
●顔面体操(マッサージ)
●唾液腺マッサージ
●発声練習
●呼吸の練習 など。噛む、飲み込む、話す、笑うなどの口腔機能を維持できれば、自分の口からおいしく食事を摂ることや会話を楽しむことができます。
さらには筋肉や脳が刺激され、内臓の働きも活性化し免疫力も向上します。
●歯周病、う蝕、欠損などの歯科疾患についての医学的な指導・治療
●義歯の不具合調整 など。口腔機能の改善方法や維持管理など、専門的な指導を受けることで、誤嚥性肺炎の予防と再発しないためのよりよい生活環境を継続します。
2016年2月15日 9:00 AM ishigami