2019.05.01 病は気から
- 『病は気から』とは、「病気はその人の心の持ちようで重くもなれば軽くもなる」という意味で使われる、皆さんもよくご存じのことわざです。
“気”というのは現代医学でいう「自律神経」を指していて、「気が動転する」「気が乗らない」「気力がみなぎる」「気を確かに」など、心の揺れや乱れを表現する言葉としても多く使われています。
『病は気から』のように、健康状態がいかに心理的要素に左右されているかを示す「プラセボ効果」と呼ばれる現象があります。
プラセボとは薬効のない偽薬のことで、このプラセボを医師から痛み止めとして処方されても痛みが治まる、という心理効果からそう呼ばれています。
しかし、他にも高山病を誘発させた被験者に偽の酸素ボンベを吸引させると高山病の症状が和らいだり、転倒して背骨にひびが入りひどい痛みに悩まされていた高齢女性に、椎体形成術と称した偽の外科手術を施したところ、痛みが消えた例(文献:Jo Marchant 著『「病は気から」を科学する』より)など、偽薬にとどまらずプラセボ効果は実証されています。
プラセボ効果は「薬を投与された」という条件づけと、「これで良くなる」と前向きに期待を抱く気持ちを持つことによって効果を発揮することがわかっています。
仮に投与された薬が偽薬とわかっていても、効果が認められるというのですから、人間ってすごい力を秘めているのですね。
そうは言っても、『気の持ちよう』だけでは病と闘えないことを私たちは知っています。
しかし、たとえ治療そのものは無理でも、痛みなどの自覚症状は『気』を別の何かに向けることで緩和することが可能であると考えられ、そのためのさまざまな取り組みが分野を超えて研究されています。
仮想現実や催眠療法などを利用して、痛みに対する不快感を軽減する試みもそのひとつです。
世界のトップリーダーやアスリートが実践していることでも話題のマインドフルネス瞑想。
Mindfulnessとは、過去や未来、あるいは自分自身を悩ませる事柄から距離をとり、「思考や感情にとらわれず、今この瞬間に意識を集中する」こころのトレーニングのことです。
マインドフルネス瞑想の実践では、抑うつや不安感が軽減したり、痛みを減少させるなどの効果も報告されています。
身体に持病を抱えていたり、慢性的な痛みに悩まされている、そんな状態ではこころの状態も落ち込んでしまいます。
でも「このままじゃいけない」「なんとかしなくては」と無理に自分を奮い立たせるのではなく、今この瞬間の自分自身を静かに受け入れてみる、そんな些細な体験がこころの回復を促すきっかけになるかもしれません。
2019年5月1日 9:00 AM ishigami