2016.12.01 口の中のバイオフィルム
- バイオフィルムという言葉をご存知ですか?
バイオフィルムは、細菌の共同体で、私たちの身の回りの様々な場所で普段から目にしているものです。
例えばお風呂や台所の排水溝、道路わきのドブ川の中のヌルヌルなど、これらの正体がバイオフィルムです。口の中のプラークの正体も実はバイオフィルムで、複数の細菌が結びつき、膜に保護されることで活発に活動。
その結果、むし歯や歯周病などの感染症を引き起こします。
バイオフィルムとは、空中や口腔内で浮遊している細菌同士が寄り集まってくっついて、何かにへばりついているもののことです。自らの分泌物で膜を作ることによって身を守り、増殖を続けます。膜は粘着力が強く、他の細菌も引き寄せて共同体を作ります。
口の中に歯がある限り、常にむし歯菌が存在していますが、唾液の浄化作用によってむし歯になるのを防いでいます。
歯全体が唾液に触れている状態であればむし歯になることはありませんが、歯と歯ぐきの間や歯と歯の隙間など、いつも磨き残してしまう箇所があると、そこにバイオフィルムが形成され、歯の表面が唾液が触れることができなくなります。バイオフィルムがはり付いた歯の表面は、バイオフィルム内の細菌が生産する酸によって徐々に溶け出し、そのまま進行するとむし歯になります。
バイオフィルムが歯周ポケット内に形成されると、歯周組織に炎症が起こり、腫れや出血、痛みなどの症状が出ます。
この症状を歯周病と呼び、歯周ポケットには歯ブラシも届きにくいことから、放っておくと症状は進行し続けます。歯周組織は、歯を支える土台の役割をしているので、歯周組織の炎症がひどくなると歯は支えを失ってぐらつき始め、最後には抜けてしまいます。
口の中にはむし歯菌の他、様々な常在菌が存在します。これらの菌が個々に存在しているときには抗生剤や抗菌剤などの薬剤が効果をあらわすのに、細菌同士が結びついてバイオフィルムが形成されてしまうと、細菌がバリアに守られているため、ほとんどの薬剤は効かなくなってしまいます。バイオフィルムの除去には、地道に削り取るのが1番の近道なのですが、強力な粘着力を持っているため、自宅での歯磨きで除去することは困難です。
できてしまったバイオフィルムは、歯科医院での機械的な除去が必要になります。
抗生剤や抗菌剤などの薬剤が効きにくいバイオフィルムですから、できれば口の中にできるのは防ぎたいものです。
そのためには、口の中の細菌の数をできるだけ減らす、細菌がバイオフィルムになる前に取り除く、ということが大切です。正しいブラッシングと細菌のえさになる食品(砂糖を使用した食品)の制限で細菌の繁殖を抑え、フロスや歯間ブラシ、ブラッシング後の洗口剤の利用などで細菌を取り除きましょう。
2016年12月15日 9:00 AM ishigami