2020.05.15 動物の歯(爬虫類・両生類、鳥類編)

  • 動物の歯(爬虫類・両生類・鳥類)ステイホーム週間のゴールデンウィークが終わりましたが、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が引き続き延長されました。
    自宅でリモートワークが続いていたり、職場が時短営業で帰りが早かったりと、家族がそろって食事できる機会が増えた家庭も多いでしょう。

    今号では「動物の歯」シリーズ第三弾、『爬虫類・両生類』そして『鳥類』をご紹介します。
    家族で食卓を囲む機会に、いろいろな動物たちの食事についても話題にしてみてはいかがでしょうか。

  • 爬虫類・両生類
     

    哺乳類とは対照的に、ワニなど爬虫類の仲間には次のような特徴があります。

    *一生の間に何度も生えかわる ⇒ 『多生歯性』

    *すべての歯がほとんど同じ円錐形をしている ⇒ 『同形歯性』

    *あごの骨の表面に歯がはりついている状態で、歯に根っこがないため抜けやすい

    ワニは獲物を食いちぎり丸飲みにします。噛み切ることのできない大きな獲物を捕食するときは、体を廻して引きちぎります。

    待ち伏せするワニ

    食らいついたら離さない貪欲なイメージがあるワニですが、お食事タイムは基本『待ち伏せ』です。
    変温動物であるワニなどの爬虫類は、一度大きな獲物にありつければ、1年くらいは何も食べなくても生き延びることができるといいます。

    毒牙をむくヘビ毒ヘビは牙から毒を出し獲物をしとめます。この牙も歯の一種ですが、普段は口の奥で横向きに倒れていて、大きく口を開けると起き上がるしくみになっています。
    獲物に牙が刺さると、牙の中にある管から毒が注入されます。

    下の歯の数が左右で違うヘビ!
    東南アジアに生息するセダカヘビというヘビのなかまで、右巻きのカタツムリを好んで食べる種類では、下あごの歯の本数が左側よりも右側のほうが多くなっています。
    この「右利きヘビ」の食事のしかたに興味がある方はこちらのサイトをのぞいてみてはいかがでしょうか?

    http://s-park.wao.ne.jp/archives/1443『WAOサイエンスパーク』
    (参考記事:京都大学白眉センター研究グループ より)

    カメの食事

    カメは爬虫類の仲間ですが、歯がありません。
    あごの肉が硬くなっています

    カエルは上あごにだけ歯があり、下あごには歯がありません。
    カエルは舌を使って虫などを捕食するので、歯はあまり必要ではないのかもしれません。

  • 鳥類
     

    始祖鳥

    トリには歯がありません。歯の代わりにあるのが「くちばし」です。
    ただし、トリの祖先といわれる始祖鳥には歯があったということが知られています。

    大昔、トリは歯があったために重く、長く空を飛ぶことができませんでした。
    トリは大空を長く飛ぶために進化の過程で歯を失ったのです。

    歯を持たないトリはエサを丸飲みにします。
    歯の代わりにお腹に砂の入っている袋『砂嚢(さのう)』を持っていて、この砂を利用してエサを砕くのです。

  • 食事の変化と歯の進化
     

    動物たちの歯のしくみは、どんな環境で、どんなものを食べているかで大きく違うことがよくわかりました。
    食べる物によって適した歯のしくみから、ヒトの歯の割合についておもしろい説があります。

    歯の種類の割合

    ヒトの永久歯は親知らずを除くと全部で28本です。
    切歯が8本、犬歯が4本、臼歯が16本です。
    これを割合にすると2:1:4となります。
    切歯は野菜を噛みきる歯、
    犬歯は肉を引き裂く歯、
    臼歯は穀類をすり潰す歯なので、
    野菜:肉:穀類を2:1:4の割合で食べることが、
    バランスのとれた健康的な食生活なのだそうです。
     

    このように歯を持つ脊椎動物は、長い進化の過程で食べるものに最適な歯のしくみを獲得しました。
    しかし現代のヒトは、柔らかい加工食品や調理済みのレトルト食品などの普及もあり、食事時間と噛む回数が大きく減少してきていることが問題になっています。
    栄養補助食として手軽なサプリメントも、噛むことを必要としません。

    このままだと、これからのヒトの長い進化の過程で歯を失うなんてことも…あり得ないことではないのかもしれません。