キシリトールについて思う



今までこのHPでは、いろいろな話題を多くの先生が調べては皆様へ「歯の話」 として提供してきました。私も今回の話題「キシリトール」を調べてと思い、HPで検索するとでてくるわ、でてくるわ。いくらでも専門家の意見がみられます。既にネット環境に浸っておられる皆様にはあえてそんな知識を列挙してもしょうがないので歯科医師である私が(歯科の知識、情報を知っている側の立場として)皆様の視点にたって共に考えていきたいと思います。

これまで私がキシリトールについて知っていたことは。

  • ショ糖(砂糖)の代替糖の一つとして紹介されたフィンランド産の甘味料。
  • 高濃度だと下痢を起こす。 ・ショ糖に比べ、高い。
  • ミュータンス菌(むし歯の原因菌)により分解されないのでむし歯をつくらないと言われている(コマーシャルされていた)のを聞いたことがある。

ほとんど歯科医師とは思えない程度の知識しかなく、また興味もなかった。 ましてやキシリトールなど味わったこともないのが現実でした。これもガムを 常習的にかむという習慣が私にはなかった。お盆に田舎に子供と帰省したとき 近所のスーパーで「キシリトール」というガムをみつけました。子供がガムを 買ってくれと騒ぐので「そんなもん、食うんじゃねえよ」。「食べるんじゃない、 かむんだよ」と小生意気な返答がかえってきましたが、先程のキシリトール、 ちょっと味見してみようという気もあって親子でくちゃくちゃしてみました。 なるほど甘い、口の中がすっとするので嫌みな甘さはなく、後を引かない。 ガムとしては好感がもてたのは私見ですが事実です。「また、明日買ってあげるからちょっとお父さんに預けておきなさい」と言い放ち取り上げて成分表を 見てみました。キシリトールとマルチトールを含むなんて表示があった と思います。
50ぐらいのネットにでている資料を読みあさりました。
できるだけ簡単な言葉で書きたいと思います。

  1. キシリトールはむし歯予防効果があるのか。 確かに、ミュータンス菌等はキシリトールの代謝においてそれを栄養素として活用できず、酸(ph5.5以下では歯を溶かしてしまう)を産出せず、しだいにその数を減らしていってしまうようです。
    しかし、キシリトールで阻害されないミュータンス菌等の出現も認められ、直接キシリトールがミュータンス菌等に効果 があるのではなく、キシリトールを 含む、他の糖アルコールと同様(前述のガムの成分のマルチトールもその一つ) ガムとして噛むことにより、唾液の分泌を促し、唾液のphをあげる効果がある ということです。唾液にはすぐれた緩衝作用( phを中性に保つ作用)があり さらにリン酸やカルシウム成分が初期のむし歯の再石灰化を行うということです。唾液が分泌されるだけでかなり、う蝕予防の効果 が期待できるということですね。
    その唾液の分泌を促す意味では有意義あり、キシリトールそれ自体ではミュータンス菌の栄養素にはならない(とりあえず)。しかしキシリトールがむし歯予防効に直接貢献しうると言うのは言い過ぎではないか、と感じました。

  2. 上述の他の糖アルコールがキシリトールの代わりにならないのでしょうか。キシリトールはショ糖に匹敵する甘さを持っている為、他の糖アルコールでは勝負にならないということです。しかし高い。

  3. おなかがゆるくなるか。
    私は50%キシリトール含有のガムを噛んでなりました。キシリトールは吸湿性が非常に強く、多くの水分を吸着したまま消化管を移動します。大腸で腸内細菌にて分解されると多量 の水分を遊離し大腸で水分量が増加してしまいます。軟便や下痢は一時的、であり、またキシリトール50%の含有率では個人差もあろうかと思います。ただキシリトール100%のガムを噛むかと言われれば、私は遠慮しておきましょう。
    どんなものを食べてもその後キシリトールガムを噛めばでphは上がるのか、 と言えば、そんなことはない、ということです。飴等、ショ糖の濃度が高いものではなかなかphは下がりません。
    つまり、従来通りの
    • 正しい食習慣
    • 適切な歯磨き
    • フッ素予防
    が確立されることが大事だと思います。
    食後、毎回、キシリトールガムを噛むのはお好きな人はどうぞ。
    そこまで北欧の習慣を日本でまねなくても、というのは私見です。
    ただ、むし歯の原因にならないガムであり、場面を選べば顎を動かすこと によってストレス発散にもなるし、唾液の分泌が促され、さらに適度な清涼感も得られ好感のもてるガムであったことも事実です。
    キシリトールでなくても他の糖アルコールが入ったガムでもいいんですが、 “甘さ”と言う点ではキシリトール入りのガムに軍配があがりそうですね。

余談ですが、某メーカーさんは「キシリトール」を商標として既に登録して いるようです。キシリトールはキシリットとも言うそうですが、キシリトールというひとつの糖アルコールの名を商品にしてしまうのは商魂たくましい、と 感じてしまいました。そこまでしなくてもおいしいガムという印象が 後味悪い結果 と感じたのは私だけでしょうか。

今回、参考にさせて頂いたHP を以下に紹介させて頂きます。
これはキシリトールについて肯定的な意見と否定的な意見が含まれており、 歯科医師としての自分がこれを読んだ時、上述のことを感じた、ということです。ご参考までに。