『2021年の介護報酬改定!をふまえた訪問歯科の先手について』
表題の通り、3年に一度の介護報酬改定の内容が日々情報公開されており、その中でも歯科医院経営に関する箇所はぜひ早期にチェックいただきたいと思います。現時点ですべての情報が出揃っているわけではありませんが、報酬改定への対応は先行者利益がありますので、仮説を含めご提言させていただき、先生方においてはこのメリットを享受いただけましたら幸甚です。
まずは、居宅療養管理指導が歯科医師、歯科衛生士ともに変更となります。
<歯科医師 居宅療養管理指導> 月2回まで算定可
1 509単位 → 516単位
2 485単位 → 486単位
3 444単位 → 440単位
<歯科衛生士 居宅療養管理指導> 月4回まで算定可
1 356単位 → 361単位
2 324単位 → 325単位
3 296単位 → 294単位
こちらは昨今の医療保険(歯科訪問診療料)の流れを汲むように、一か所で大人数を診る(10名以上)評価が下がり、逆に在宅や小規模施設での訪問診療を評価する変更となっています。ここの考え方としては、1か所の施設で診る人数の最大化という方向性は変わらず、ただし、コロナの時代も踏まえると大型施設に偏る収益構造はリスクがあるため、自院近隣の在宅強化、施設であればグループホームとの連携がポイントであるとみます。
次に、訪問歯科においては、歯科医院との連携により訪問先の介護施設が加算算定できるものがいくつかありますが、ここも複数点変更が見られます。順に下記の通りです。
・口腔衛生管理体制加算の廃止と口腔管理体制加算の変更
施設系サービスについて、つまり特養や老健において、口腔衛生管理体制加算が廃止となり、基本サービスとして、口腔衛生管理体制を整備し、状態に応じた口腔衛生管理の実施を求める(※3年の経過措置期間)という変更がなされます。口腔衛生管理加算については、訪問衛生指導料の算定が2回までとなってしまう点から(本来4回まで算定可)、これまで積極的な歯科医院からの連携提案がなかったように思いますが、従来の90単位×対象人数から、110単位に増点していることから、施設側のニーズが高まり、つまり歯科医院からのアプローチも有効な施策となる予測が立ちます。これは、施設内での歯科衛生士の口腔ケアの普及率向上から健康増進につながり、歯科医院としても高収益化・安定化が図られるため、三方よしの取り組みといえます。
・施設における口腔スクリーニングに関する新たな加算
通所系サービス、多機能系サービス、居住系サービスにおいて、利用者の口腔機能低下を早期に確認し、適切な管理等を行うことによって、口腔機能低下の重症化等の予防、維持、回復等につなげる観点から、介護職員が実施可能な口腔スクリーニングの実施を評価する新たな加算が創設されます。詳細は現段階でこれからというところですが、このスクリーニング方法に関して、おそらく口腔内へのかかわりの低い一般の介護職ではハードルが高いと思われ、歯科医院から何らかのレクチャー、サポートができると、特にグループホーム、有料老人ホーム、特定施設のサ高住などは、施設参入の新たな攻め手となりそうです。
上記の他にも、施設系・通所系・居住系・多機能系サービスについて、事業所の全ての利用者に係るデータ(ADL、栄養、口腔・嚥下、認知症等)をCHASEに提出してフィードバックを受け、事業所単位でのPDCAサイクル・ケアの質の向上の取組を推進することを新たに評価するといった内容もあり、医療費削減や健康増進、自立支援の観点で、歯科口腔の分野への評価、期待が高まっていることを感じます。
改めてになりますが、報酬改定は一つのチャンスです。訪問歯科に取り組んでいる、もしくは今後取り組みを考えている医院様にとっては、この波に乗ることが重要です。